匂いの話

 

忘れられない人がいる。

 

その人とは、同じサークルでありながらも、秋の学祭の時に初めて知り合った。(人数が多いサークルだと、先輩との関わりは自分から行動しないと生まれない、っていうのは普通だと思うんだけど、どうなんでしょうか。)

 

その人は、車に関する学科の先輩で、自分の車を持っている人だった。二人乗りのスポーツカー。白いハードトップが特徴のかわいらしい車だった。

 

ひょんなことから、その人の車に乗せてもらうことになった。覚えているのはにおい。無臭。何もしなかったのだ。

 

乗り物酔いの激しいタチの私は、特に車のにおいには弱かった。だから、先輩の車に乗る前は不安だったけど、目的地まで何も感じることなく着いた時は驚いた。緊張していたせいもあっただろうけども。

 

あと、その先輩のにおいが、その、良かったのだ。これが忘れられない要因の一つで、今回言いたかったことでもある。

 

私は、その人のにおいがとても好きだった。渋くも甘くも爽やかでもない。花でも石鹸でもないにおい。

本人から「香水はつけていない」と言っていたので、洗剤・柔軟剤・芳香剤と本人のにおいがブレンドされたものなのだと予想している。

卒業していなくなるから、なんて免罪符があったにしても、流石に、洗剤・柔軟剤、何使ってるんですかなんて質問はできなかった。

 

余談になるが、私にとって表現力のある人、というのは、においの描写が秀逸な人だと思っている。本当になんて言ったら表現できるのかわからない。

 

人のにおいには、強さがあると思う。

一緒にいる時に、距離があってもその人のだとわかるほどの強さ。

または、抱き着いたり密着したりして初めてわかる程度の強さ。

 

自分にとって好きな人を数人思い浮かべてほしい。

においの好みだけではなくて、強さで考えてみると、好きな人たちのにおいの強さは、同じくらいじゃないだろうか。

ちなみに、私は同性ならば、においがあまりしない人が好きである。異性は逆。

 

その先輩とは、一度お付き合いできたのだけれど、性格が合わずに別れてしまった。所謂、付き合うとなんか違った、っていう典型的なパターンであった。

 

この記事を書いたのは、時間潰しに入ったサイゼリアで、同じにおいをかいだからである。

こんなところに居やしないのに、周りを見回してしまった。